黒地花車流水杜若に桜文様

黒地に全面に白い桜が咲き乱れ、牡丹に菊、藤房の花車を描き一番の見どころは平安時代の伊勢物語の第九段、東下りの場面に登場し、謡曲「杜若」の題材にもなった八橋を思わせる流水に杜若の構図です。この物語にちなんで橋と流水と杜若を組み合わせた図柄が尾形光琳の絵などに表わされています。根津美術館所蔵の国宝尾形光琳作「燕子花図屏風」やニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵の「八橋図屏風」を彷彿させる優雅な古典文学を描いている打掛です。黒地に金糸を巧みに使って織りあげた職人の技が光る逸品です。は「智の色」「沈黙の色」と言われあらゆる色を含有している為に、取り合わせる色を引き立てます。錦で織られる華やかな五彩や金色も黒によってより艶やかに、優雅に、時には粋にと美しく変化します。黒は決して変わらぬ不動の気持ちを表わす約束の色。花嫁の最期まで添い遂げる変わらぬ気持ちと覚悟を表わします。