ピンク地裾紫暈し秋桜花に
        手刺繍春花文様

秋に薄い紫みの赤や白、紅色の花を咲かせるコスモスは、明治時代に伝わったメキシコ原産の植物です。日本の風土によく馴染み、庭植えされるほか広く野生化しています。丈は高くなりますが全体にやわらかみを帯び、風に揺れる姿が日本人の感性に訴える物があるので、「秋桜」の字をあてたのでしょう。日本の歌謡曲にも歌われて慕われています。コスモスの葉や花芯にラメ糸を施し、肩から背にはコスモスの花の刺繍と小さな蝶達を舞わせています。とかく和花や古典柄が多い打掛に洋装感覚をいち早く取り入れたモダンな打掛です。1900年のパリ万博博覧会で、アールヌーボー文様が斬新なものとして日本に伝わってきました。その4年後の明治37年、セントルイス万博に多数の日本工芸家が訪れテーマの花文様を持ちかえつて来ました。カトレアに鈴蘭、三色董と言った洋花が着物模様を飾り、カーネーションが流行ったのも昭和の初期のころです。