さて、島台の上に若松の一枝。五本のゆたかなあんを上用の皮で巻いてある「蓬ヶ島」というのは、絹の反物からの見立てであろう。
あんの中に三色の子持あんを仕込んだので、一層美しさめでたさを増す。子孫繁栄の意も読みとれる。
かねがね、わたくしは結婚披露宴にこけおどしの白いウェッデングケーキを飾るよりも、この「蓬ヶ島」を使う方が床しくて意義ふかいと考えている。
包むという動作の多様なのもわが日本の特色だが、「花びら餅」や一枚の正方形小豆色こなしの四隅を折ってある「千歳山」や、もう一つ、蓋物に入れた「梅が香」にしてもみな「包む」という行動文化の所産である。「包む」に並んで「結ぶ」という文化。贈り物に必要な水引や釘なし建築の合掌造りのたる木をくくる繩などが著しい例だが、この有平での「紅千代結」なども可愛い一例である。
正月ごろには、自然の中に紅が乏しいこともあって、菓子の方でそれを補うつもりがうかがえるといえようか。