慶奉菊寿

真っ白な駒塩瀬を真っ黒に染め上げる染織の技術の素晴らししい逸品です。黒は「智の色」「沈黙の色」と言われあらゆる色を含有しているために、取り合わせる色を引き立てます。金彩加工の金の輝きが黒地によってより艶やかに、優雅に、時には粋にと美しく変化致します。文様も菊の花を主に金箔の技法の変化で立体感を感じさせます。菊の紋様は正倉院宝物の中にも見られますが、多く用いられる様になったのは平安時代です。皇室の紋章として定着したのは鎌倉時代に後鳥羽上皇が好んで用いられた事に始まるそうです。天皇家は16花弁の八重菊、宮家は14花弁の裏菊。菊は花が清雅であるばかりでなく長い期間咲き続けるところから延命の植物として好まれました。菊の花の金色のバリエーションと菊の葉に施した赤箔ぼかしが職人の匠の技を感じさせます。